【Part3】
正子 あのりんご、サビがつきやすい品種でね。見た目悪いんです。
ー サビっていうのはどういう状況なんですか?
幸敏 なりはじめの頃は木の勢いが良いからサビがつきやすい。
形は潰したような形になりやすいってね。
ここ5、6年で安定して収穫できるようになってきた。
ひどい時は身が割れるくらいサビがつく。
ー う〜ん、(サビってなんなんだろう?)
正子 サビっていうのはね、、、
(正子さん サビのついたリンゴをとりにいく)
ー りんご農家は、年間通じて作業するんですか?
幸敏 そうそうそう、果物産業つうのは、1年間、ず〜〜と休みはないよね。
冬になると、剪定って、いらない枝を切る作業、
1月から3月まで剪定の作業だね。
4月までずれ込む時もあるけど。
3ヶ月は真冬に選定するのっさ。寒いなかね。
ー そうですよね、外だし、真冬だし。
幸敏 花が咲くのはゴールデンウイークのあたりだからね。
花が咲いたらすぐに受粉しなきゃならないから。
昔は、ほら、綿棒でひとつひとつ手作業で受粉してたの。
だけど今、、
正子 こういうの、ほら、サビっていうの。
(奥さんがサビのついたリンゴを持ってきてくれる)
ー へ〜
ー これはあの、育ちがいいからこうなるってことですか?
幸敏 う〜ん、どうなんだろうね
それがわからないのがいちばんの欠点なんだね。
でも、お客様には、隠さずに全部売り出すのっさ。
最初は(売れないから)はじいてたんだけどね。
味がわかってもらってからはもうそのまま、
味がわかってもらえればね。試食してもらえれば。
納得してもらってから買ってもらってる。
− 話を戻すと、剪定が終わって、花が咲いて?
幸敏 そうそう、昔は綿棒で人工授粉してたんだけど、爺さん婆さんだし、二人で600本のリンゴ全部に手が回らなくなって。
今は、ミツバチでやるのっさ。
ー え〜、ミツバチ?
幸敏 レンタルであるんですよ。
ー え〜〜〜! レ、レンタル?!そんなのあるんですね!
幸敏 そう、ミツバチのレンタル。ミツバチを3群、約10万匹はなすのっさ。
ー わ〜すごい!
幸敏 それでミツバチに受粉してもらって。
受粉が終わって、しばらくしたら摘果作業(摘果作業:果樹園芸で結実が多すぎたり,局部にかたよっていたりするとき,幼果の間引きを行うこと)に入る。いらないやつとか、病気のやつとか、ハサミで切り落とす作業。
これがまた手がかかるのさ。
何万っていう枝だから120〜130実をならせるためにね。
ー 一つの木にどのくらいの実がなるんですか?
幸敏 180〜250くらいかな、木の大きさにもよるけど。
あとは、昔の木だと1000くらい実がなる。
ー おお、それは大変。
幸敏 だから摘果作業っていうのは、一番、本当に重労働なのさ。
気が遠くなるような数だし。今は技術も進化してるけど大変。
6月いっぱいまでかかるかな。7月までかかるね。う〜ん、
りんご育てる最後の仕上げの摘果。
だけど、今、収穫時期だけど、摘果出来てないところが目立つのっさ。笑
正子 仕上げしたんだかしてないんだか。笑
幸敏 りんごにふくろかける人は忘れることないんです。
普通は、必ず果実にひとつひとつ袋かけるからね。
うちは私が跡ついでから、袋はかけないの。
無袋栽培って言うんだけどね。
今は国内でも、だいぶ、袋を付けなくなった。
青森は袋かけているのは8割以上はあるって聞いてる。
(色付き悪くて)見栄えが悪くてもね。あえて袋かけないの。
(袋つけないと)糖度で1、2度差があるんじゃないですか。
ー おお。それはすごい良いですね。
ー 吉田果樹園さん全体で何本くらいりんごの木があるんですか?
幸敏 う〜ん、何本だいなぁ?
矮性りんご、列になって植えてあるやつ。
1反分に72本くらい植わってんのさ、
8反分あるからね。560本。以上あるべね。
ー 大変ですね。笑
幸敏 花が散れば、農薬散布しなきゃダメ。
使える量の農薬って決まってるからね。
いかに少なくするかって。
今年認定されたんだよ。化学肥料も半分にするって。
うちは県から認定されてる。
こういうシールを貼って。
宮城県でこのシールを貼れるりんご農家は3人しかいないんだよ。
ー 3人ってすごいですね。
今、低農薬とか消費者は関心があるから、
農薬を半分しか使ってないというのはいいですよね。
ー 収穫は10月くらいですか?
幸敏 いちばん早い品種は9月、盆棚用に、
信濃レッドがいちばん早いかな。
その次が津軽。その次が秋映、
色がいいなぁと思って“ばかされて”収穫すると渋い時がある。
その判断が難しい。収穫のタイミングね。
ー 最初は渋みがあるんですね?
幸敏 最初はね、熟す前は渋い。
収穫の2週間前までは若干の渋みはある。
ー 実がなって収穫できるまでにどのくらいかかるんですか?
幸敏 5月の上旬に花が咲いて、
9月の中旬に収穫するんだから。4ヶ月半くらい。
ー お店の店頭に並んでいるりんごは、
収穫してすぐに並べられる感じですか?
幸敏 そうそう、うちでは収穫してから次の日には店頭に並ぶ。
うちは市場には今は全然出してないの。
産直か、農協の菜果好、あとはイベントがあれば売りに行く。
昔は市場が多かったけど、
私たちが作ったりんごは市場では、お金にならない訳。
色付きがまばらで見栄えの良くないりんごは、好まれないから。
だから直接消費者に届く売り場で売る。
ー 美味しく食べるには、買ってきたら
いつくらいまで食べたらいいんですか?
しばらく持つ感じですか?
幸敏 品種にもよるんですけど、2週間くらい。
夏りんごって津軽あたりまでは2週間おいたらやわぐなっぺねぇ。
津軽っていうりんごは、もともと熟すとうんとやわぐなる。
だがらいかにして硬いりんごを作るのが難しいところ。
秋映はやわらかくなりにくい、
でも1ヶ月くらい経つとロウが出てくる。
りんごを触ると手が黒くなる。ロウが上がる。
(ロウ:りんごは成熟するにつれてリノール酸やオレイン酸などの脂肪酸が増えて、これが皮に含まれるロウ物質)
正子 知らない人はワックスでもかけたんじゃないのっていう。笑
Part4に続きます。